栽培・地域リスクは、殺虫剤と害虫の組合せの固有のリスク値を、地域の自然特性や防除状況に合わせて調整し、より実態に近づけることを目的としている。そのため、各地域における農作物の栽培法、害虫発生および防除法などの実情に応じて抵抗性発達に影響する点を総合的に考慮して、栽培・地域リスクを表3の評価基準のとおり「高、中、低」の3区分に調整し、それぞれリスク値「2、1、0.5」を付した。
評価は主に「当該地域の作物栽培法での害虫発生と防除法」の点に集約して行った。抵抗性対策を考慮した防除を促すために、防除方法についても評価基準の検討項目に組入れてあるのが特徴である。特に、害虫防除では薬剤処理に加えて、IPM実践(農林水産省消費安全局植物防疫課,2005)に使用される各種防除技術が実用化されている。IPMを指向した栽培・防除では、薬剤使用が適切に削減されるために抵抗性リスクが低くなると考える。
また、地域での薬剤感受性検定の結果を、地域・栽培リスクの評価へ反映させ調整してもよい。各殺虫剤の抵抗性の広がりや薬剤感受性は、地域によるこれまでの防除の経緯によって異なるため、各殺虫剤に固有のリスク値を付す殺虫剤リスクで評価するのではなく、栽培・地域リスクの評価の中で判断されることに留意されたい。
このように、栽培・地域リスクは地域ごとに異なるために、リスク値の判断は現場の・研究者・指導者・生産者が個別に判断するものである。
表3.栽培・地域リスクの評価基準