6.殺虫剤抵抗性リスク評価を踏まえた抵抗性対策

 抵抗性リスク評価を踏まえた具体的な抵抗性対策の項目を後述した。殺虫剤抵抗性リスク評価のリスク値の大小にかかわらず、各項目をあらかじめ実施することを推奨する。特に、抵抗性総合リスク値が12を超える場合は、抵抗性対策の実施が重要である。また、抵抗性リスク評価は、薬剤感受性モニタリング結果や現場調査による抵抗性の広がりの情報と併せることで、より効果的となる。後述のように薬剤感受性モニタリングに基づく「殺虫剤抗性リスクレベル(農研機構、2019)」と、「薬剤抵抗性発生状況の指標(フェーズ)(農林水産省植物防疫課;白石、2017)」が公表されており、併せて参考にされたい。

〔推奨する殺虫剤抵抗性対策〕

  • 薬剤感受性モニタリング(生物検定,遺伝子診断)を実施して、抵抗性の発達状況を把握する。
  • 害虫の連続する世代に同じ系統(作用機構)の薬剤を処理しない「世代間ローテーション」を行う。
  • 耕種的な予防措置に加え、生物的および物理的防除などの「IPM技術を駆使」した防除を実施する。
  • 異なる系統(作用機構)の薬剤混用を選択肢の1つとして検討する。
  • 「高薬量・保護区戦略」を採用した防除体系を検討する。これは,防除対象の害虫個体群中に薬剤感受性遺伝子を一定に保つことで、登録薬量で薬剤防除しやすい集団を長期間にわたり保つ方法である(鈴木、2012;山本、2019)。
  • 圃場内の抵抗性害虫の「薬剤感受性を復元させる」ために、害虫の被害許容水準・要防除水準での薬剤防除を守るとともに、圃場外の薬剤感受性害虫を防除し尽さない栽培体系を検討する。

参考〔殺虫剤抵抗性リスクレベルの判断〕農研機構(2019)
 薬剤感受性モニタリングの結果に基づいた殺虫剤抵抗性リスクレベルの判断が、平成26~30年度農林水産省委託プロジェクト研究「ゲノム情報等を活用した薬剤抵抗性管理技術の開発」の成果から公表されている。

  • リスクレベルⅠ 抵抗性は未発達: 地域個体群における抵抗性遺伝子頻度が、その薬剤の使用開始以前並みに低く、かつ頻度上昇までに十分な時間が見込まれる。薬剤の通常の使用が可能であり、抵抗性管理に準拠した使用方法で用いる。
  • リスクレベルⅡ 抵抗性が発達中: 地域個体群における抵抗性遺伝子頻度が上昇しているものの、薬剤の効力低下には至らない。代替薬剤も準備しておく。
  • リスクレベルⅢ 既に抵抗性が発達: 地域個体群における抵抗性遺伝子頻度が十分高く、かつ薬剤の効力が低下しているか、害虫の1~2世代以内の確実な低下が予想される。当該剤の使用を中止し、代替薬剤へ速やかに移行する。

参考〔薬剤抵抗性発生状況の指標〕農林水産省植物防疫課/2017年度
 日本での「薬剤抵抗性病害虫の発生状況等調査」で用いる抵抗性発生状況の指標(フェーズ)が農林水産省消費・安全局植物防疫課から公表されている(白石,2017)。

  • フェーズ0 : 薬剤感受性低下は認められていないものの、モニタリング調査などにより薬剤抵抗性の発達を警戒している場合。
  • フェーズⅠ: 薬剤抵抗性の発達が一部の圃場での現象にとどまっている状況。指導者には周知するが、農家への指導の必要性は低い。
  • フェーズⅡ: ある程度の面積規模で薬剤抵抗性の発達が見られており、農家への注意喚起を要する。(その程度の広がりで注意喚起を行うべきかは、ケースバイケースであり、防除指導機関の判断による。)
  • フェーズⅢ: 薬剤抵抗性の発達が各都道府県下で広域に広がり、対象薬剤の使用については何らかの指導が必要。