りんご栽培における殺虫剤抵抗性リスク評価の仮想事例で、主に害虫種による抵抗性リスクの違いを概観した(表5)。この場合は化学農薬以外のIPM資材を使用しない場合を想定しているため、抵抗性リスクは比較的高く評価されている。抵抗性リスクが数値化されることで、抵抗性対策の害虫種による優先度がわかる。ただし、各害虫における防除の重要性と抵抗性対策の重要性は異なることには留意されたい。例えば、シンクイムシ類の防除の重要性は極めて高いが、抵抗性総合リスク値はハダニ類よりも低く評価されている。
この事例では、今後の抵抗性対策を次のように考える。特にハダニ防除では抵抗性総合リスク値が36と最も高いため、薬剤ローテーションや混用だけでなく、例えば天敵等を活用したIPM体系へ見直すことが勧められる。防除の重点害虫であるシンクイムシ類やアブラムシ類・カイガラムシ類に対しても、薬剤によっては重点的な抵抗性対策実施の目安となる「リスク値が12」であるため、防除基準等であらかじめ抵抗性対策を注意喚起することが必要である。
表5.りんご害虫における殺虫剤抵抗性リスク評価 (同一地域の防除暦)/仮想事例
注)この事例では、栽培・地域リスクの違いは、各害虫の発生量が異なることによる。 抵抗性総合リスク値が12を超える場合は、抵抗性対策の実施が特に重要である。